悪い癖、家の中での立ち読み
すっかり体が冷えてしまった 阿川弘之さんの代表作「雲の墓標」を自宅本棚で立ち読みました 京大から海軍予備学生になり 特攻隊として最期を迎える主人公の日記の形をとっています 中学生の時にこの本に出会い それ以来、少しずつ、先の大戦の海軍予備学生達の遺稿集や 非売品の海軍航空隊の戦友会などの回想録などを 古書店で見つけるたびに手元に置いてきました 海軍贔屓です 古書店に、ある時手に入りにくい名著「海の歌声」を筆頭にさまざまな特攻隊関係の書物がまとめて出て、少しずつそれらにアンダーラインや、ご老人のものと見られる筆跡での書き込みを見つけ、きっと生き残りの方の遺品なのではないかと思い、なんとか散逸させまいと、まとめて手元に持ってきました 「海の歌声」はまさに「雲の墓標」のモデルとも言うべき本、14期の予備学生の生き残りの方が、散華した同期生達の最後の日々を綴ったノンフィクション号泣必死の本です(1972年出版、現在絶版) 高校1年の春に、奈良の氷室神社の満開のしだれ櫻を撮影していた時に出会った ミッドウェーと特攻隊の生き残りのおじいさんとの会話、その直後に 薬師寺の池のほとりで出会った、最後の海兵出身の紳士との会話も大きな影響を与えました 彼らが後にくださった手紙を大切にしてあります 「彼ら(特攻隊の戦友)の事を忘れないであげて下さい」という言葉が思い出されます そしてまた、生き残った人達の生涯負い続ける、生きる、という事の重み そして、その上でこの平和を享受する我々の責任 当時の日本の知性を代表する若き予備学生の彼らがその時、何を感じ、思って生きたのか 「雲の墓標」はまさに彼らの心の代弁のように感じます 他人の、体験や、感情を自分のものとして追体験できること 他人の幸福や、あるいは不幸、喜びや哀しみを 自分自身のものとして受けとめられる感性と想像力を失わないでいたいと考えています この事は、作家の落合信彦さんも書いておられますが 他人の、特に苦しみ、哀しみを自分の苦しみ、哀しみと感じる事ができること これが世界平和への唯一の路だ、と 「雲の墓標」に出て来る若者達は私とそうは違わない人達に思えます 感じ方も、考え方も、極めて近い、彼らにとても親近感を持ちます 僕ならどう感じるだろう、どうするだろう 生死の問題、学問への取り組み、もちろん恋愛も 作者の阿川さんの彼らへの深い愛情、共感を感じます 遠からぬ死を確信している主人公が思いを寄せる少女にこっそり贈り物を届けた後の感情 ・・・まったく無邪気に受け取ってくれるとは思えない。自分は自分の気持ちと特別な好意とが示したかったのだが、それが無視されれば不愉快だろうし、それを受け入れられてもやはり困る 東大出身の藤井大尉の出撃前、最後の訓示がいい 「各自地球を抱いてぶっ倒れろ」 阿川さんの他の海軍青春小節 「春の城」「暗い波涛」も大好きです いつか彼らの青春を過ごした土地への慰霊の旅をするつもりです 鹿屋、宇佐、百里、木更津・・・ 〜〜〜 夜 もうすぐ遠い寒い国で誕生日を迎える、久しく会わない後輩にお祝いのカードを出しました 民族音楽の研究者 メール万能の時代ですけれど 手で書く方がずっと気持ちが伝わる気がします 一言の素早いメールのやり取りも大好きですけれど・・・ 寒くなってきました 寒いのが大好きです さびしくて、優しくなるのが好きだな
by francesco-leica
| 2007-11-24 00:51
| 日記
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