昔は、いいフルートケース(カバーではなくて、楽器が直接入るケースです)が色々ありました。 ロットのオリジナルケースは、錠前も凝っていて、ほぼ工芸品的な美しさ。 昔のドイツのケースは、これまたドイツらしいというか、無骨で、頑丈一点張りのような風合いですが、それまた使い込むと味のあるものです。私が好きなのは、むかしのヘインズのケースです。 これ以上小さくできないような小ささで、楽器がきっちり、もうぶつかりそうな感じで入っています まるで中島飛行機製エンジン「誉」のよう・・・(わからない方は飛ばして下さい)。 事実、中古で見るこの時代のヘインズケースの中には、なかで楽器が接触するものもあります。 きれいですが、小さくすることで、板が薄くなったいたり、強度を犠牲にしている面もありますから取り扱いには注意が必要です。 あと、昔のヘインズのケースで特筆すべきは、その外装の革です。 モロッコ革、というのでしょうか、実に固く、傷のつきにくい、美しい黒革で、この革がもうないそうです。おそらく鞣しが独特なのでしょう。 世界的に薄い、いい革というのは入手難ですが、ケース用の革もしかりのようです。 ロットのような軽量で、華奢で、それこそ工芸品のような楽器は、こういう美しいケースに入れたいものです。 いまや、世界的にいいケースはどんどんなくなっている。 高級な海外ブランドもあきれるようなケースに入れている時があるし(原価3000円か?)。 あきらかに寸法が合っていないものを平気で長年売っているところもある。マスターズの昔のは素晴らしいと思ったけれど、いまはもう違うものみたい。 先日、アキヤマフルートで愛用のルイ・ロットのパッド交換をお願いしていたのを受け取りにいきますと。ちょうど、アマチュアのフルート奏者で、アキヤマフルートのケースを作っていらっしゃる職人さんがおられました。 試作品のケース、これが素晴らしい! 小さくて、きっちり入り、しかも! ケースの中で楽器が回転しないように実にうまい工夫がしてあります。 惚れ込みました、試作品ということですが譲って頂きました。 この楽器がケースのなかで回転しない、というのはすごいことなのです。 ほとんどのメーカーのケースが寸法がちょっと緩かったり、使っていくうちに中の布地が摺れて薄くなって、楽器がケースのなかで動き出します。 これが酷くなると、ケースの用をなしません。フルートは精密機械ですからね。 よくやる手は ものすごくタイトに楽器を挟んで動かないようにする → ものすごく出し入れがしにくい上に、時間が経つと緩くなる ケースの上蓋にぎゅっと押さえるクッションがついている → キーとか、歌口にテンションがかかるのが心配 と、あまり根本的な解決にはならないものばかり。 このケースはケース自体に(うまく言えないのですが)回転しないような工夫があります。 量産品にはできない手作業です タイトにきっちり入って、楽器にテンションはかからず、ケースのなかで動かない。 これはうれしい。 唯一の問題は、楽器の出し入れの順序は守らないといけないというコトです。 例えば、かならず左からケースにいれる(というか、ケースにはめる、という感じ)とか・・・。 アキヤマはルイ・ロットとほぼ同一寸法ですので、アキヤマ用のここのケースは、そのままロットに使うことができます。 もちろん、ほかのメーカーに合わせてもきっちり作って下さるそうですよ。 ケースが小さくなると、鞄に入りやすくなるのでうれしい。 オーダーで3万5000円ほどから。 ケース職人 工房Maro 益田真路さん アキヤマフルートで取り扱い http://www.akiyamaflute.com/
by francesco-leica
| 2011-03-06 19:09
| コラム
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