人気ブログランキング | 話題のタグを見る

オリエント・エキスプレス

昨日、須賀敦子全集2巻の「ヴェネツィアの宿」を読了
私の記憶のなかで、この「ヴェネツィア〜」が須賀さんの本のなかで一番好きなもの
として記憶していたが
その大きな理由が、最後の短編「オリエント・エキスプレス」にあることに
そこまで読み進むまで、不覚に思い出せなかった
電車の中で、とうとう最後まで読んでしまって、
顔を手で覆って、泣いてしまった

究極の知性が、「自分は何か」と問い続けている
静かな信仰、旅、人生をヨーロッパにかけるということ
彼女のエセーの多くの動機ともなる、肉親や愛する人を見送るということ
ヴェネツィアの宿には、さらに音楽が係ってくる

たまらなく優しい喪失感が全編にわたって通奏しながら
「孤独が、かつて恐れたような荒野ではないことにきづく」過程を丁寧に見つめ直す時間がある


〜〜〜

いま、NHK教育で演劇をやっていた
忙しくて、やることはいっぱいあるのに、
さいごまで、見てしまった

芸術劇場 -劇場中継「カール・マルクス:資本論、第一巻」

俳優ではなく、実際の経済学者や投資コンサルタント、労働者や学生などが登場し、自らの実人生を語り合い、現代社会を描こうというドキュメント的手法による独特な舞台。


ほとんどは、ドイツ語、その次に日本語、若干のロシア語と中国語
斬新、面白い
息を詰めるように、次になにがおこるのか見ていた
終わったら、ざわざわーと鳥肌

こういうものはドイツ人が考えそうなことだ
資本論に興味を持った

〜〜〜

今日は月刊新潮を電車の中で読んでいた
いろいろな小説が無節操に読める、という懐かしい体験
お目当ては辻邦生・北杜夫の往復書簡
田中長徳さんの屋根裏プラハ、これはおもしろい
ただ、彼の文体に慣れ親しんだ私だから附いて行けるけれど
普通の作家の文章に親しんだ人には、読みにくいかもしれない

青山七恵という知らない作家の短編が心に残った
83年生まれだから、若い
なんでもない日常なのに、ものすごい「予感」に彩られ
しかも、その予感がことごとく外れる、という不思議な読後感
なんだか騙されたような気がしている
欲求不満なような、宙ぶらりんの、でもうまい、とおもって許せる
気になる
読み始めて、みるまに、立体的な人間が立ち上がって来て生き始めておどろく

けれど、愛読者にはならないだろうとも思う
普通の人の普通の人生や家庭には興味が持てない


こういう文芸誌を手にしていると
自分が雑食になってしまったような嫌悪感を少し抱く
読みたいものを読むだけでなく
そこにあるものを読む、という節操のなさがいやになる
しかし、ある時期のわたくしは間違いなくそうだった
本と雑誌が積み貸さなり、地震の時など命の危険を感じるほどだった
懐かしい気分だ
それにしても。。。楽譜を読むのはあきれるくらい遅いのに
本を読むのはあきれるくらい早い(速い)。

オリエント・エキスプレス_b0107403_1392186.jpg


昨日の首都高3号線、きれいな夕刻、渋滞
by francesco-leica | 2009-07-11 01:39 | 読んだ本


<< 超藝術 マスターのバタ丼 >>