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フィリア、下田、ナント、パリ

フィリアホールの本番、下田での「天地創造」、そしてフランス・ナント公演と、あまりにどれも大きな思い出を残す公演で、もうとてもとても文章にまとめられない。

お客様、親友であり偉大なマエストロ山田和樹と、素晴らしい仲間と、ご協力くださった各位に心から心から御礼を申し上げたい。

一言ずつ。
フィリアのシューマン。シューマンは本当に難しかった!最初、オケはぎこちないところもあったと思う。後半に向けて尻上がりによくなっていったのでは無いだろうか。お客様とゆっくり終演後の時間を取りたかったのだけれど、慌ただしいご挨拶になってしまいました。ごめんなさい。
この公演から、お借りしている素晴らしい後期の1938年製のロットを本格的に使用しはじめました。
太くて豊かな音、低音から高音までまったく引っかかり無くスイスイとコントロールできて、ちゃんと音色もある、いつも白尾さんと話す「現代的に吹く為の最高の妥協点」としての後期ロットです。どうもリッププレートも後期のはより口に近く、より開いて吹けるようになっています。これが低音の補正にはありがたい。
そして、私の参加する横シンでは初めて、盟友の小池郁江さんに前半の首席を吹いてもらったことも個人的大イベント。とても楽しく、うれしいひと時だった。彼女がまだ大学1年生の時に、横シンの前身のトマトフィルに一緒に乗ってもらって以来初めて(僕が乗らないときに首席を吹いていただいた事はあります)。素晴らしいスーパー笛吹きになられて、感無量。僕の大切な大切な妹分です。

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横シン2013、同級生一同!

下田は本当に「天地創造」の曲のすばらしさに救われたところがあったと思う。合唱団は過去最高の素晴らしさでした。ブラヴォ!鰻もおいしかった。

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うなぎ大好き!

鰻「小川家」さん、ご飯が少し固めになっていて(以前はお粥手前?くらいの柔らかさで、それだけ不満だった)実によろしい。慢心せずに精進していただきたい。
予期せぬアクシデントのおかげで、親友と差しでくそ真面目な話ができたのは、今となってはこれもまた良い思い出か。
普段の下田なら車で行き帰りゆっくり遊んでいくのだが、今回は次の予定が切迫しており電車で行き帰り。

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山田君誕生日in下田

下田の終演後、そのまま羽田に戻って深夜便でフランスに飛んだのだが・・・。もうもうもう、過去最高の楽しさ、激しさ、忙しさ、充実の1週間だった。
10年分くらいの勉強ができたと思う。これだ!これだ!!これなんだ!!!という瞬間が多数。
一番の思い出は、2回目のプロ、ドビュッシーの小組曲、亡き王女のためのパヴァーヌ、ビゼー交響曲、というまさにフランスへ四十七士殴り込み的プログラムが終わった時だろう。ルイ・ロットはなにかに取り付かれたような鳴りっぷり。魔物か、天使か、もう別の楽器、別次元の響き。フランスに里帰りを喜んでいるようだった。これこそ、私の長年もとめていた最高の楽器ではないかと思った。体の重さが無くなってフワフワにただような感覚。終わると、ヴラヴォの嵐、スタンディングオーベーション、涙ぐんでしまった。それからもう毎回のスタンディングオーベーション。横シンやったぜ!
しかし、これはオーケストラのほんの一里塚にすぎない。もっといいオケに、うまいオケに、もっとメンバーにも、居心地のいい、やりやすいオケに変えていかなくてはならない。全公演終了後、大いに盛り上がりながらも、心の半分は冷静に次のステップを考えていた。
経営も、運営も、音楽の中身も、時代を先駆けていく存在に。
それにしても、いい仲間が今回も揃ってくれた。2番を吹いてくれた(数曲首席もふいてくれた)後輩の梶原君に助けられた。ボケっとして短いソロを落ちた僕の代わりに一瞬で気づいて吹いてくれたのはもう感謝。よくできるね、あんなこと。あたらしい素晴らしい若い才能にも出会えた。将来楽しみ。
そして、なにより、我々のマエストロ山田和樹。刎頸の交わり、とは、彼の事だろう。一生ついていくし、助けていきたい、助けてもらいたい、と思っている。横シンの仲間に感謝。

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梶原くんと。

音楽も、人との交わりも、食事も、もうもうとにかく濃くて濃くて、今、帰りの機内で思い出しているのだが、遥か彼方昔のことに感じるのだ。
日本に帰ってきて、最初に出す音がどうなっているのか、楽しみ。

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素晴らしい木管セクション。

http://liveweb.arte.tv/fr/video/Kazuki_Yamada_quatuor_de_guitares_Folle_Journee_Nantes_Juan_Manuel_Canizares_Fernando_Espi_Pablo_Sainz_Villegas_Emmanuel_Rossfelder_Yokohama_Sinfonietta/

仏ARTEのアーカイブ。横シンの演奏です。

その後パリで数日、命の洗濯をした。物欲、食欲まみれの数日。

この物欲食欲祭に大事な友人の鈴木優人くんを誘ったら、予定をかえて泊まりがけでパリに来てくれた。なんていいやつだ!
うまいものを食い(まくり)、買い物をし(まくり)、反動でしばらく山にでも籠ろうかというほどの数日。
人生初のロブ・パリの靴を購入。7000番ラストの優秀さに瞠目!
びっくり。足にふわりと馴染んでいやな感じがない。もちろん、ゆとりがあるからなのだが、そのゆとりのとり方が絶妙なのだ。

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ロブのサンジェルマン店にて。

以前、グリーンが欲しくて、なんども試着して、結局馴染むラストがなくて、買うのをやめた経験からいうと、店員が持って来た一足目がそのままお買い上げ、というのは本当にすごいこと。
優人くん、この後、超重要なミッションを担っていただく事になっている。もう楽しみで、楽しみで、しかたがない。

まあ、たまにはよいかと思います・・・。こういう数日も。

いくつかエピソードを、鈴木くんと、仕立て職人の鈴木健次郎さん宅を訪問、スーツの最終チェックに同行してもらって、そのあと、美味しいモロッコ料理を鈴木夫妻と一緒に。そのあとパリ夜景ツアー。健次郎さんの運転する素晴らしいプジョー407に乗せてもらう。

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優人くんと、エッフェル塔前にて。

最後はサンジェルマンの老舗カフェ・フロールだったのだが、なんとそこでイヴリー・ギトリスさんと、木嶋真優さんに会う。びっくりするが、あのかっとび老人の素敵なペースにみんな引き込まれて夜が更けていった。奇跡!もちろん記念写真。

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パリの奇跡の夜!

次の日はパッサージュ53という、話題の日本人シェフのお店でランチ、ご同行下さったビジネス粋人スーパーマンの御馳走になってしまった。
まずはメインデッシュ(豚肉の低温ロースト)がすばらしかった。あとデセールも実に粋でおいしかった。他も美味しいが、ちょっと凝り過ぎか。あとは、料理はともかく、日本人スタッフのコミュニケーションの質が悪い。もてなす、という事はどういうことなのかを考えてもらいたい。これで良く星が取れたと思う。やはり、星などあまりアテにしないのが上々であろう。このレストランについての全く同じ感想を、他の在住日本人からも聴いた。
僕の周りには、気が利いて、言葉を誠実にあやつれる、いつも機嫌のいい人間しかいないので、そうでない人にたまにあうと目が点になってしまう。
しかし、特にメインディッシュとデセールの素晴らしさは本物でした。

夜は、昼の贅沢の罪滅ぼしに、とことこ小走りに走ってオペラあたりまで行って、ラーメンを食べた(一応粗食のつもり)。日本料理街があるのはウィーンとかと比べてうらやましいところ。日本でもなかなか食べない、こってりトンコツに胃が悲鳴をあげて、帰ってすぐ寝込んだ。やりすぎだよ。こりゃ。

翌日のお昼は留学中の後輩に案内してもらってシーフードの名店へ。牡蠣がおいしかった(→が!、この牡蠣にあとで祟られました)。

夜はまた鈴木健次郎さんとモロッコ料理の名店「Timgad」で、タジン鍋料理を。これまた、すばらしかった。地鶏と野菜と、プルーンをタジンで蒸したもの。

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ホテルの目の前が凱旋門。

帰りの機内で、なんだか朦朧となってきて、こいつは熱が出て来たぞ・・・。往復共にプレミアムに格上げしてもらったおかげで、大半死んだように眠って過ごす。なんとか勉強中の「春の祭典」のスコアを1部までは読み通すも、そこでダウン。せっかく、かっわいいCAさんが横を通り過ぎる度に探し物をしてくださるわ、何故か佇んで考え込んでくださるわ、(さりげなく)話しかける絶好の機会を提供してくださっているにも関わらず、あまりの体のだるさにに名前すら覚えられず。もう一生の不覚、バカバカバカ。

体調の悪さはどうやら牡蠣の祟りだったらしい。その後数日、38.8度の熱を出して寝込む。

本当に素晴らしい日々を過ごさせていただいた。音楽家の幸せを凝縮したような日々。
日本もいい國だし、音楽はどこでやろうと変わらない、とも思う。でも、それでも、本場で演奏する、認めてもらう、このことの重さには代え難い。そして、仲間の力。
みんな違う、考えも違う、環境も違う、誤解もあれば腹の立つ事もあろう。
でも、横シンに乗っている以上(それはまず、山田和樹と仲間たち、という意味だ)、かけがえの無い仲間だと感じている。
今回の海外公演に来られなかったメンバー、人数の制限でやむなく呼べなかったメンバーには、次には、またその次には、と思っていることを伝えたい。
そして、新しい世界を切り開いていきたい。僕らは自由なところがいいわけで、自由な音楽家として、自発的に演奏しているのだ。

さて、4月から、僕の生活はちょっといままでとは違うものになります。
35歳にして、初めて、公の責任というものをちょびっと、担う事になります。
もちろん、それまでも法人の理事や、イベントの責任者、生徒や学生を預かるという責任は負っていましたが、今回はより長く、将来に向かっています。新鮮な気持ちです。えー、これは公生活においてです・・・私生活は自由です(笑)。
今まで程には機動力豊富に動き回れなくなるかもしれませんが、演奏活動や生息域(多少首都圏東部に偏ります)については変化ありません。
考え方も、絶対に守りになど入るもんか、自由で豊かな精神を持って生きる、と念じております。
もしこれでモリオがつまらなくなったと感じられたら痛恨の極み。面白いままでいると誓います。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。またご報告させていただきます。

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ナントからパリへのTGV車内にて。
by francesco-leica | 2013-02-20 21:57 | ヨーロッパその他特集


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